多焦点レンズだからこそ・・・

3月末で先進医療保険が使えなくなることが周知されたためか、このところ「先進保険を使って多焦点レンズを入れて欲しい」との患者さんがとても多くなっています。今まで手術をためらっておられた方も、この機会に手術に踏み切られるというのは、理由は何にせよ望ましいことには違いありません。

 

しかし、多焦点レンズは誰にもお勧めできるレンズではありません。特に、眼底疾患により視力が出にくい患者さん、RKやレーシックで角膜収差が多い患者さん、それに緑内障などの慢性疾患が今後進行する可能性のある患者さんなどでは、多焦点レンズを断念していただくことも多いのです。

 

特に多いのが緑内障です。60才以上の白内障手術適齢期ともなれば、緑内障罹患率もとても高いです。また、多焦点レンズを希望されることが多い高度近視では、さらに高くなります。現状で視力、視野に影響がなくても、緑内障の素因があれば、高齢になるとともに症状が出てくることもあります。

 

それでも多焦点をなんとか、と希望される場合、お勧めは2焦点や3焦点ではなくEDOFレンズです。このレンズは焦点深度拡張型と言って、焦点を分割するのではなく、少し拡げるというコンセプトでできています。EDOFの一つシンフォニーは、遠方にピントを合わせると、近くは60cmくらいまでにピントが合い、それより近くはボケてきます。細かい文字を読むときや針に糸を通すとき、老眼鏡が必要です。

 

そのかわり、ピントが合ったところでの像のボケは少なく、コントラスト感度は単焦点レンズと同じくらい良好です。緑内障、屈折手術後、眼底疾患での多焦点レンズとして望ましい性能です。

 

多焦点レンズを希望される患者さんだからこそ、余計に慎重に眼科的検査を行い、緑内障や眼底疾患の有無を調べなければなりません。適応の決定、レンズの選択が重要だからです。

 

ST