ウィーン古典派の代表、モーツァルトの生年は1756年、ベートーベンは1770年ですから、この二人は14歳違い、ちょっと歳の離れた兄弟のようなものです。
ところが、モーツァルトは1791年没なのに対して、ベートーベンは1827年まで生きましたから、モーツァルト没後36年間も生存したことになります。
ベートーベンは途中から中期、後期と作風が変化していますので、モーツァルトとはほぼ同世代であるにも関わらず、残された音楽は大きく異なってしまいました。
先日、モーツァルト専門有線で聞き覚えのある曲が流れていました。子供の頃に練習したピアノソナタに違いないのですが、流れてきた曲はバイオリンとの二重奏(バイオリンソナタ)でしたので、あれっと思って調べてみました。
手元にある楽譜を調べた結果、これはモーツァルトによる最後のバイオリンソナタK547であることがわかりました。「初心者のためのバイオリン助奏付きピアノソナタ」と題されており、アンダンティーノ、アレグロ、変奏曲の3楽章仕立てになっています。
この曲の2楽章アレグロをピアノ独奏用にちょっとだけ変更した曲がかって練習した曲だったようです。ところが、この曲は偽作であるとされており、最近の原典版ピアノソナタ全集には入っていません。
K547の3楽章にはモーツァルト自身がピアノ独奏用に書き変えた楽譜があり、こちらは変奏曲の一つとして原典版楽譜にも入っています(K54)。
「初心者のための」とわざわざ断っているのは、アマチュア向けに出版して印税を稼ぎたかったからではと言われています。最晩年のモーツァルトは金銭に困っていたからです。
K547は確かに技術的にはそれほど難しいものではないにせよ、K545(同じ頃に作られた、初心者向けのピアノソナタ)共々、芸術的にはとても深い曲です。特に3楽章の変奏曲が最高です。
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