シューベルト(1)

お正月休みは趣味の楽譜研究で過ごしました。研究といっても大したことではありません。同じ曲のいろんな楽譜を読み比べ、弾き比べすることです。

前回、ベートーベンのピアノソナタの楽譜について書きましたので、今回はシューベルトについてです。

シューベルトショパンと並んで最も好きな作曲家です。自宅のピアノの部屋には肖像画を掛けてあります。シューベルトピアノ曲即興曲や楽興の時が有名で、ソナタはそれほどでもありません。「さすらい人幻想曲」の方が有名なくらいです。しかし、最近はソナタの研究が進んで、ピアノのレパートリーとしても重要視されつつあります。

ベートーベンと同じような時期の作曲家にしては研究が進んでいないには理由があります。生前に出版されたソナタはわずか3曲しかなく、他は死後に出版されたもの、未完で残されたものと様々だからです。シューベルト自身の手で完成された曲は全21曲のうち半数ほどに過ぎません。

しかし、未完のソナタも楽章の出だし、第一主題、第二主題、展開部の始めは残されていることが多く、シューベルト自身、「あとは判るでしょう」と続きを書かなかった可能性が高いのです。

と言いますのも、ソナタ形式という楽曲の構成がワンパターンだからです。

シューベルトが残した素材から、全21曲を完成する試みも行われており、ヘンレ版とウィーン原典版で出版されています。

ということで、シューベルトソナタを全曲勉強するためには、これら二つの楽譜を参照するしかありません。前者はパウル バドウラ=スコダによる補筆、後者はマルティーノ ティリモによる補筆で、一長一短です。私はティリモの方がしっくりくる感じがします。

補筆後のソナタ全21曲は、質、量ともにベートーベンに匹敵します。

シューベルトの作品では「ハ長調」が特別な位置を占めています。交響曲「ザ グレイト」、ピアノ曲さすらい人幻想曲」、バイオリンとピアノの「大幻想曲」、ピアノ連弾曲「グラン デュオ」、それに最高傑作の弦楽五重奏曲などです。

ピアノソナタでもハ長調の曲は多く、2番、10番、15番『レリーク」と3曲あります。

中でも15番のティリモ完成版は上記ハ長調傑作群に加えるべき名品です。

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