最近人気の多焦点眼内レンズですが、すべての患者さんにお勧めできるわけではありません。もちろん、値段が高いこともありますが、値段と関係なしに、医学的にも単焦点が良いこともあるのです。
1)眼底疾患や緑内障があり、矯正視力不良や視野の異常が予測される場合。単焦点レンズでメガネ完全矯正を行いますと、眼底疾患があってもそれなりの最高視力が得られます。
2)角膜の高度乱視、不正乱視。乱視が強いと裸眼視力が低下します。更に、不正乱視ならば、術後のタッチアップレーシックでも矯正できません。タッチアップレーシックができないくらいの角膜厚(薄い)は多焦点を避けたいです。
3)超高齢者。認知機能の低下とともに視機能も低下しますので単焦点のほうがよいです。
4)網膜・硝子体手術が予定される場合。黄斑前膜やILMのピーリングは術中に詳細な観察が必要ですので、単焦点レンズが無難です。もちろん、多焦点が入っていても手術は可能です。
そもそも、裸眼生活を希望していない患者さんでは多焦点の必要性はありません。
数十年来メガネになじんでこられ、仕事もばりばりこなされている人が、「多焦点レンズのほうがよいのでは」と誤解されることも多いです。
値段が高いから良いとは限りません。
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