ショパンの好み

バッハ、モーツァルト、ベートーベン、ショパンと並べると、何れ劣らぬ大作曲家ですが、現代ピアノのための曲となるとショパンが先駆者ということになるでしょう。

新しいピアノの性能に合わせてインスピレーションが湧いたのです。ショパン以降、例えばラフマニノフにしてもショパンの影響はそこかしこに感じられますので、ショパンの偉大さがわかります。

そのショパンは自作を好んで弾いたのはもちろんですが、他の作曲家の作品にも興味を示しています。

モーツァルトのピアノトリオは何度も演奏会で取り上げたようですし、ベートーベンのピアノソナタ「葬送」(作品26)もよく練習していたそうです。自身のソナタ2番はこの曲からヒントを得て作られています。

また、晩年に隠棲していた頃は、バッハの平均律の第1巻をよく弾いていたそうです。

ベートーベンの葬送ソナタショパンの葬送ソナタは構成が似ているとはいえ、全く異なった印象の作品で、好みから言えば、圧倒的にショパンの方が好きですね。

ショパンのは1楽章から「死」と向き合っており、3楽章の葬送行進曲のあと終楽章では霊魂がひらひら飛び回るかのようです。実に恐ろしい作品です。

ところでショパンやリストは意外と手が小さかったとはよく言われることですが、多分都市伝説の類で、信じられません。

10度(ドからミまで)が「楽に」届いていたに違いありません。それでなければ、コンチェルト2曲を自分を売り出すために弾いたはずがありません。

コンチェルト2番やエチュード作品10−1など、手の大きい作曲家の作品です。シューマントッカータと同じようなものです。

西洋人の男性ならば10度以上は当たり前に届くことでしょう。むしろ大きすぎて困る場合が多い。

他の多くの作品で小さな手でも弾けるように作られているのは、生活の糧だった貴族のご婦人のことを慮ってのことだったのでしょう。

参考文献: コルトー著「ショパン」(新潮文庫


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