強主経線切開

術後になるべくメガネなしで過ごしたい患者さんに人気の多焦点眼内レンズです。しかし、レンズを単焦点から多焦点に代えるだけで期待した結果が出るわけではありません。術後に近視、遠視、乱視などの屈折異常が残れば当然裸眼視力は低下します。

1)術前検査を正確に行う、2)計画通りの嚢内固定を行う、3)乱視を残さない、というのが最低限の条件で、それでも屈折異常が残った時は、4)術後のタッチアップレーシック、の出番となります。

3)について、白内障手術中に術前にある乱視(角膜の歪み)を矯正する方法には、a)乱視矯正の入ったトーリックレンズを用いる、とb)乱視矯正切開を行う、の二つがあります。しかし、現在、先進医療に認定されており民間の医療保険が使える多焦点レンズでトーリックはありません。

「先進医療特約に入っているので多焦点でお願いします」と希望される患者さんが強い角膜乱視の場合、b)乱視矯正切開しか方法がありません。これが強主経線切開法です。

今日は全症例のうち5例で強主経線切開を行いました。

角膜の曲率が強い部分で、その軸に合わせてあらかじめ計画された場所で切開し、無縫合で手術を終えます。切開部分の緩みで角膜の曲率が変化し、乱視が矯正されます。切開幅は年齢と乱視度数によって変化させ、4mm以上は強膜切開になります(普通は角膜切開)。

屈折矯正を加味した白内障手術は色々なところに目配せが必要ですので、時間も余計にかかります。

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