バックリング手術

先日、久しぶりに網膜剥離にたいするバックリング手術をする機会がありました。網膜剥離症例は大体月1〜2例行なっていますが、最近はほとんどが硝子体手術によるアプローチです。

すなわち、水晶体摘出+IOL挿入+硝子体切除+レーザー光凝固+液空気置換+20%SF6置換(ノーバックル)です。この方法で90%以上治るとされています。

しかし、私が手術を教わった頃、昭和51年くらい、網膜剥離の手術はすべてバックリングでした。大学の教官となった昭和54〜62年、大学では網膜剥離担当でしたので、留学の期間を除いて、毎週バックリング手術を行っていました。

ただ、当時のやり方で今と異なるのは、双眼倒像鏡をかぶって眼底を見ながらクライオを行なっていたことです。いつのまにかこの方法は名人芸となって姿を消し、今では、硝子体手術で用いる広角ビューイングでクライオを行ないますので、小さな孔でも見つかりますし、手術助手もよく勉強できます。

バックリングの適応となるのは、比較的若年で硝子体の液化が進んでいない症例です。しかし、液化がゼロではありません。網膜剥離の原因となる液は硝子体中から移動していますので、硝子体の液化がないと剥離が起こりえないからです。

理想的にはこの液化の体積分をバックルで縮め、その頂点に網膜裂孔がくるようにします。位置決めが難しいです。

硝子体切除を行ないませんので、眼内へはシャンデリアをつけるのみです。よって、凝固は必然的にクライオとなります。

冷凍凝固は網膜色素上皮脱落からPVR(増殖性網膜症)の原因となりますので、眼内からのアプローチでは使いません(光凝固を行ないます)。逆に、バックリング症例では硝子体をしっかり残しているのでクライオでも安全なのです。

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