日帰り網膜剥離手術

連休中手術を2週間お休みしますので、今週は最後の駆け込みとなり、たくさんの手術が予定されました。月から金まで、午後は手術で満杯です。

今日はひさしぶりに網膜剥離の話題を。網膜剥離といえば、眼科における救急性疾患の代表で、速やかに手術をしなければなりません。また、99%の施設で、今なお入院させた上での手術となることでしょう。当院では20年前の開院当初より、網膜剥離の日帰り手術を手がけてきました。

同じ網膜剥離といっても、症状の程度は様々です。また、同一症例に対する手術方法も、一定の決まりがある訳ではありません。10人10色といわれるように、術者によって様々な方法が行なわれるのもまた網膜剥離の特徴です。

私が研修医の頃、網膜剥離の治療法はバックル、クライオ、そして「安静」でした。裂孔の位置にバックルを置いて、一晩絶対安静(トイレも食事もベッドで行なう)とすると、翌日になると剥離が治っているのです。これがなんとも不思議だったので、網膜下液の吸収のメカニズムについて研究課題とし、米国留学までいたしました。この件に関し、英語の論文を10編以上書いています。

ところが、昭和55年頃から硝子体手術が導入され、ここ10年来のようにカッターの性能が向上し、周辺機器も進歩してきたおかげで、最近では、バックルが従、硝子体手術によるタンポナーデ(硝子体腔にガスやシリコンを入れて網膜をくっつける方法)が主となっています。

バックルを行なわないことの利点はまた、術後の痛みが少ないこと、そして、屈折の変化が少ないことも挙げられます。白内障手術の分野では屈折矯正があたりまえになっているのに、網膜剥離で水晶体摘出をすれば、屈折異常が出てしまうのでは、片手落ちと言えましょう。

そこで、手術の第一選択として、ノーバックルの硝子体手術ということになります。もちろん、若い方では通用しませんし、水晶体摘出(+IOL挿入)の上、周辺部まで硝子体を可能なかぎり切除する必要があります。また、再手術では原則バックルが必要となってきます。

下方や多発、あるいは巨大裂孔では、ためらうことなくシリコンを用います。さもないと、術後早期に再発し、増殖性網膜症になってしまいます。

海外でシリコンの使用率が30%程度と高いのは、網膜剥離の入院手術が保険で認められていないからです。

シリコンは再手術により取り除かなければなりませんが、「入院の代わりにシリコン」と考えると、納得できるのではないでしょうか。

当院では網膜剥離症の手術を可能な限りお受けすることにしていますので、お気軽にご相談ください。

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