トーリック眼内レンズ

今日もお昼から白内障手術を行ないました。19件のうち、3件でトーリックレンズを使いました。

このレンズは乱視矯正を兼ねたレンズで、術後の裸眼視力の向上が期待できます。多焦点眼内レンズとならぶ、屈折矯正の切り札です。

多焦点レンズのように遠と近の二カ所にピントが合うわけではありませんが、乱視を治すことにより、ピントが合っている部分での精度が向上します。近くなら近く、遠くなら遠くがよりはっきり見えますし、メガネへの依存度が減ることは間違いありません。

多焦点レンズのように、グレア、ハロの副作用がありませんので、より勧めやすいレンズです。

ただし、術前の矯正量の決定および手術の際の軸決めに細心の注意を要します。下手をすると、かえって乱視が増えるという結果にもなりかねません。使用方法はとても難しいレンズです。

導入して2年を経過し、ようやくこのレンズのコツがわかってまいりました。

一番大切なのは乱視矯正度数の決め方です。一般的に用いられる眼軸測定装置、IOLマスター(ツアイス)の乱視度数ではなく、より精度の高い、前眼部OCTなど、角膜形状解析装置の値を用いる必要があります。

また、直乱視と倒乱視では度数を変えなければなりません。最終的に少しの直乱視を残すようにします。

更に、自分が作ってしまう、起因乱視の程度を適切に評価しなければなりません。起因乱視は必ずしも一定ではありませんので、この値が狂うと、術後の乱視も大きく異なってくるのです。一定の乱視が出るように、創の作成にも神経を使います。

すべてがうまく行ったときは、患者さんにもとてもご満足いただけます。ただし、遠用または近用のメガネは必要になってきます。

ST