辻井さんのピアノ

学校の夏休みはもうすぐですが、医療機関にお休みはありません。ただし、当院も、夏の間は職員に順々に夏休みを交代で取ってもらうようにしています。したがって、手術の予定が少し組みにくくなっています。

お盆の週は予定手術がありません。何年か前は停電騒ぎで7月、8月と手術の予定が組めなかったこともありました。今年あたりは大丈夫なのでしょうか?今のところ、その気配はありません。

手術はなるべくお待ちいただくことなく、早くに予定を入れるようにしています。待機期間は白内障で大体1〜2カ月といったところです。ただし、屈折型多焦点IOLレンティスは、発注から製造、到着まで最短で6週間かかりますので、その間お待ちいただくことになります。

現時点でレンティスは9月初旬くらいの手術になります。それ以外の白内障手術は8月中にOKです。

7月6日にいずみホールで盲目のピアニスト、辻井伸行さんの演奏会に行ってきました。辻井さんは大人気で、チケットもネットで売り出したとたんに売り切れたそうです。

今回は前半がラベルで後半がショパンというプログラムでした。

いつもマネージャーの方に付き添われて出て来られますが、実際の演奏が始まると、ハンディキャップのことは全く感じさせることがありません。大きな跳躍のある音符の多い楽譜を、ほぼ完ぺきに再現してくれます。見事というほかありません。

ピアノを習っているとよく「自分の演奏を聴いて!」とか言われます。どうしても楽譜をなぞっているうちに、出てくる音に無関心になりがちです。結果、とても汚い演奏になります。

辻井さんは多分その反対で、耳の感覚が飛びぬけているのでしょう。普通では考えられないほどのピュアな音、音楽そのものにとても感動してしまうのです。

私は職業柄、光を失った人に対する関心は強いわけですが、辻井さんはそのような患者さん、あるいはわれわれ専門職の人間にも勇気と希望を与えてくれる、本当に素晴らしい存在です。

2週間前には89歳の高齢のピアニスト、アルド・チッコリーニの演奏も聴きました。こちらは大フィルの定期で、サンサーンスのコンチェルト5番でした。

チッコリーニもまた高齢ゆえ、指揮者の方に付き添われてよぼよぼと出て来られました。立っているのも覚束なさそうな感じでしたが、演奏が始まると、音の美しさに惚れ惚れとしてしまいました。テンポもややゆっくり目で、じっくり聴かせるタイプで、その点は辻井さんと好対照でした。

大阪では、クラシック音楽の良い演奏会がたびたび行われています。ありがたいことです。

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