WOCに参加して

先日東京で行われた世界眼科学会(WOC)は、眼科における37年ぶりの国際学会とあって、大いに盛り上がりました。37年前のWOCのおり小生は眼科研修医1年が終わったところでしたが、京都の国際会議場に出席し、英語での議論の雰囲気を初めて味わいました。

その後、留学前後から、国際学会には毎年のように出席しておりましたが、開業してからはなかなか時間がとれず、忸怩たる思いでした。今回は久しぶりの国際学会出席で、とても楽しかったです。

WOCは「世界」とはいっても、実はアメリカさんは自国のAAOを国際会議と勝手に位置づけていますので、アメリカのドクターの自由な参加は少ないです。今回もヨーロッパ、アジア、太平洋沿岸地域から、大勢の眼科医やスタッフが参加されていました。

AAOのセッションでは、フェムトセカンドレーザーを用いた白内障手術が話題になっていました。当ブログで何度も書いてますように、この方法はCCCの大きさと位置をコントロールできますので、IOLの完全嚢内固定が可能です。したがって、多焦点や調節性といった、プレミアムIOLで威力を発揮します。

しかし、実は、CCCのコントロールは我々が行っている手動でも可能で、このことに関する限り、多大なコストと時間に見合うものではありません。実際、コントロールされたスタディで、フェムトの優位性が出て来たことはありません。

クラブ ジュール ゴナンのセッションでは、現時点における網膜硝子体に関する標準的な考えが示されました。ゴナンといえば、スイスの眼科医で、網膜剥離の手術方法を確立した、伝説の人です。

セッションのうち半数以上が抗VEGF薬を用いた内科的治療(medical retina)に割り当てられており、最近のトレンドが反映されたものでした。

medical retinaは今後更に新しい薬が続々と登場する予定ですので、ますますにぎやかなことになってくるでしょう。患者さんにとっても、手術よりも敷居の低い治療法ですから、硝子体注射が今後とも増加することは間違いありません。

海外で話題のMIGS(minimally invasive glaucoma surgery)についても聴きました。これは、ごく小さなステントのようなデバイスを隅角から差し込み、シュレム管と交通させる方法など、広義には、隅角からアプローチする緑内障手術方法すべてを含むようです。

隅角乖離のトラベクトームもこれに含まれます。これらはすべて、トラベクロトミーの代用手段ですが、はるかに侵襲が少ないのです。ただし、効果もロトミー並みであり、レクトミーほどではありません。

隅角から毛様帯下を交通させるデバイスもあります。これは脈絡膜強膜路を増やす効果が期待でき、有望かもしれません。

トラベクトームを除き、日本では未導入です。

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