亜急性および慢性網膜剥離

今週は東京で日本眼科学会兼世界眼科会議があるので、診察は臨時体制で行っており、予定手術はありません。しかし、そんな時も網膜剥離など、緊急対応が必要な疾患は待ってくれません。

月曜日に一人、本日水曜日にも一人、網膜剥離の患者さんが来られました。月曜日の方は上方の大きな裂孔二つに伴い、急激に剥離が進んだ、いわゆる「急性硝子体収縮」といった状態で、早急な手術が必要でした。

硝子体融解が進んだ状態の時、網膜に亀裂が入った途端に、融解した硝子体液が急速に網膜下腔に侵入して生じます。放置すると、全剥離になるばかりか、増殖性変化を伴ってきます。そうなると、たとえ復位に成功したとしても良好な視力を回復することができません。

一方、本日来院された方は、下の格子状変性内の円孔から徐々にひろがった剥離で、黄斑部から遠く隔たっていますので、それだけでは視力が低下することはありません。「症状のない網膜剥離(subclinical RD)」と呼ばれます。

この方がなぜ視力が低下したかといいますと、長期に及ぶ網膜剥離の存在により、網膜円孔から色素上皮が飛び出し、それが硝子体腔で増殖したことにより、黄斑前膜となり、黄斑部網膜に皺がよったからです。矯正視力が(0.2)まで低下しておりました。

この場合、もともとの網膜剥離を復位させるのみならず、黄斑前膜の除去を行わなくてはなりません。硝子体手術とバックル手術の併用になります。比較的珍しい病態です。

この症例では一刻を争うということはありませんので、網膜剥離とはいえ、来週の予定手術に組み込むことにしました。

網膜剥離とひと口に言っても、対応は症例ごとに異なります。

ST